福岡県・筑豊を走るかわいいグルメ列車の旅

路線図を眺めるのが好きです。このまちにはどんな景色が広がっているのだろう、どんな建物や土地ならではのモノがあるのだろうと、いつもつかの間の脳内トリップを楽しんでいる自分がいます。今月は、「ことこと列車」に乗りに田川へ。車窓から見える四季折々の風景と食事は、あたたかな物語に包まれていました。

※記事は2020年3月13日時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります。

  • prologue

    • 田川伊田駅
    黒田 征太郎さんが描いた絵が駅にあるよ!探してみてねー
    旅のスタートは「田川伊田駅」から。JR日田彦山線
    と、ことこと列車を運営する平成筑豊鉄道の田川線と
    伊田線の3路線を抱える駅で、1月にリニューアルした
    ばかり。ことこと列車は2019年3月に運行を始めて以
    来、直方駅〜行橋駅を走っているけど、2020年4月
    〜6月は田川伊田駅〜行橋駅・田川伊田駅を走行する
    新コースが登場!
    それにしても、田川伊田駅の
    駅舎はモダンだなぁ···。
    • たがわいた

    旅の始まり

    プラットホームに着くと、遠くからゆっく
    りとやって来る列車が見えてきた! その場
    にいた人たちはカメラやスマホを持って一
    斉にシャッタータイム。深紅のボディが青
    空に映えて、カッコイイ。車両のデザイン
    を担当したのは、JR九州の豪華列車「なな
    つ星」などを手がけた水戸岡 鋭治さん。ち
    なみに駅名標の下部分に入っているMr.MAX
    のロゴは駅名の愛称で、ネーミングライツ
    によるもの。
いざ車内へ
    • いざ車内へ

    いざ車内へ

    「こんにちは〜」と乗務員さんにあいさつ
    をして意気揚々と乗り込むと、言葉を失っ
    てしまったほど想像以上の美しさに圧倒···!
    ことこと列車に使われている技術はあの「な
    なつ星」と同レベルだそうで、「最高の
    職人たちが技術を駆使し、これまで培って
    きた技術を惜しみなく注ぎ込みました」と
    運行開始時に水戸岡さんがおっしゃったそ
    うだけど、車内はまるで豪華な応接間や美
    術館のよう。
    鉄道や電車の世界では国内初と言われる天井全面に配したステンドグラスは、水戸岡さんにとっても初チャレンジの作
    品。天井の色を引き締める黒のアイアンのデザインは1つひとつ違って、見ていて面白い。車両全体で2万2000ピース使
    ったという床の寄せ木細工は所々デザインを変えていて、単調ではない空間づくりをすることで滞在する人たちをおも
    てなししたいという職人たちの心意気が伝わってくるよう。
    なにより目を惹いたのは、衝立(ついたて)や窓枠に使用されている福岡県大川市の工芸品・大川組子。車窓から差し
    込む光や影によって空間の表情を変えるこの組子は、水戸岡さんがデザインをして職人さんが釘を使わず1つずつ手作
    業でつくりあげたもの。華奢で繊細な美しさに一瞬で心が奪われてしまった···!
    • 沿線の味をフレンチで

    沿線の味をフレンチで

    さて、列車が動き出すとお待ちかねのお食
    事タイム。2020年4月からフレンチのコー
    ス全6品がグレードアップするそうで、監修
    したのは「ミシュランガイド福岡・佐賀・
    長崎2019特別版」で1つ星を獲得した福岡
    市にあるフレンチレストラン「ラ メゾンド
    ゥ ラ ナチュール ゴウ」のシェフ・福山さ
    ん。沿線である筑豊と京築(けいちく)の
    素材をふんだんに使った料理を堪能できる。
    • 沿線の味をフレンチで
    お弁当箱に入った前菜は9つの市町村の素
    材が入っていて、ホルモン鍋のコロッケや
    田川のイノシシを使ったハンバーグなどキ
    ャッチーな料理に期待が膨らむ。「焼き印
    が付いているのは、直方の銘菓『成金饅頭』
    に見せかけたベーグルサンドなんです」と
    スタッフさん。
    筑豊はかつて石炭で栄えたエリアで、石炭
    とボタ山に見立てた「石炭リゾット 鮑のソ
    テー添え 椎茸と焦がしバターのソース 〜筑
    豊の誇り〜」や「和牛頬肉のパピオット 上
    野焼を感じながら〜」など、ひと皿ごとに
    ストーリーを料理で表現。
    椎茸と焦がしバターのソースは厚みのある鮑とピューレ状にした糸田町産のしいたけを楽しめる料理で、バターの風味
    と味わいが良く、温かな和牛の頬肉は口の中でホロホロと溶けていく。和牛が盛られた美しいブルーのお皿は上野(あ
    がの)焼と言い、田川で400年以上の歴史を持つ伝統工芸のこと。ことこと列車では、親子3代にわたって営む庚申(こ
    うしん)窯の器を使用している。
    車窓を見ながら食事を楽しんで、ある駅では地元のモノが並んだマルシェでお買い物をしたり、ある駅では明治時代に
    つくられたといわれる古い駅舎を見て時代を感じたり。忙しない日常から離れた列車の旅は、ゆっくり走ることこと列
    車の速度のように心を穏やかにしてくれる。
    • 沿線の味をフレンチで

    心の中にこんな風景がある

    「車両の先頭に移動しませんか?」と乗り
    合わせた人に声をかけられた。窓の向こう
    に見える今川の水面が日差しを浴びてキラ
    キラしている。移動すると、明治28年につ
    くられた九州で一番古い鉄道トンネルであ
    る第二石坂トンネルが見えてきた。初めて
    見る景色なのに、昔見たことがあるような
    懐かしさを感じるのはなぜだろう。子ども
    の頃の夏休みのような、みずみずしくてち
    ょっぴり切ない気分になった。車内で流れ
    る音楽や、ガラス越しに見える風景がセン
    チメンタルにさせるのだろうか。
    黒田 征太郎さんが描いた絵が駅にあるよ!探してみてねー
    第二石坂トンネルを抜けると「いつもここを通る度に呑みたい気分になります」と車内放送が流れてきた。左側を見る
    と「九州菊(くすぎく)」と大きく書かれた建物が見える。江戸時代から続く林龍平酒造だ。のどかな風景の中で繰り
    広げられるコミュニケーションに、心がさらに和む。
    ことこと列車は選べるドリンクの種類も豊富で、日本酒「九州菊」を始め、地元・福智町のあまおうを使ったアルコー
    ル入りのソーダ、ビールやレモンジンジャーなどドリンクも地元ならではのものを用意。地元の食、地元の飲み物、
    地元民である運転士さんのアナウンスと、地元愛の詰まったことこと列車。
    車窓から見える風景は地元の人たちにとってはなんでもない日常かもしれないけど、そこには古き良き九州の田舎の景
    色が広がっている。しかも、美しく装飾された席から見る風景といったら···! なんて贅沢な時間なんだろうとため息が
    出てしまう。
    春は桜と菜の花、夏はホタル、秋は紅葉と四季折々の風景を楽しませてくれることこと列車。ローカル線の旅がこんな
    にステキなのは、沿線で暮らす人たちが自分たちの土地や暮らしを大切に大切に守っているから。
    2両編成の小さな列車は、やさしい音を響かせて走っていく。
いざ車内へ

おでかけしたのは、 平成筑豊鉄道のレストラン列車
「ことこと列車」

1日1本、土日祝日のみ運行(4月〜6月は田川伊田駅発、7月〜9月は直方駅発)
料金_1万7800円(食事代含。6歳未満のみ無料、ただし席を利用する場合は1人分となる)
申込方法_Webまたは電話にて。
http://www.heichiku.net/cotocoto_train/
092-751-2102(JTB九州MICEセンター 9:30〜17:30、土日祝休み)