Vol.24 正しい敬語、遣えていますか? ④逆転敬語編

「どうぞ、いただかれてください」
先日行った飲食店で、食事を運んできた店員さんからこう言われました。どこが間違いか、お分かりになりますか?

「いただく」は謙譲語です。謙譲語とは、尊敬語のように相手を高めるのではなく、自分がへりくだることで相手を立て、敬意を表す言葉です。
冒頭のシーンでは、店員さんは私に「どうぞ食べてください」と言いたかったわけですから、この場合は「どうぞ、お召し上がりください」が正しい敬語表現です。このように、ウチ(自分側)とソト(相手側)で高める立場が逆転している表現を、最近よく耳にします。今月は、意外と遣ってしまいがちな逆転敬語についてご紹介します。

【電話で身内あてに伝言を預かった】

×「(夫、妻など)にお伝えします」
○「(夫、妻など)に申し伝えます」

⇒「伝える」のは自分の動作ですので、「お伝えする」と自分を高める表現は誤りです。

【父親が亡くなった】

×「父が逝去いたしました」
○「父が亡くなりました」

⇒「逝去」は他人の死を敬って言う表現ですので、身内に遣うのは誤りです。

【今後の予定などを確認する】

×「そちらはどういたしますか?」
○「そちらはどうなさいますか?」

⇒「いたす」は「する」の謙譲語ですので、相手の動作に対して遣うのは誤りです。

【一緒に目的地へ行くことを促す】

×「一緒に参りませんか?」
○「一緒にいらっしゃいませんか?」

⇒「参る」は「行く」の謙譲語ですので、相手の動作に対して遣うのは誤りです。

【受付で聞いて欲しい旨を伝える】

×「受付で伺ってください」
○「受付でお尋ねください」

⇒「伺う」は「聞く」の謙譲語ですので、相手の動作に対して遣うのは誤りです。

【試着室に案内する】

×「こちらの試着室をご利用できます」
○「こちらの試着室をご利用いただけます」

⇒「ご(お)~できる」は、謙譲語「ご(お)~する」の可能を表す言い方なので、尊敬語として使うのは、誤りです。

いかがでしたか?メールや手紙など文字化すると誤用に気づくことができても、会話だと咄嗟に謙譲語や尊敬語を判断して話さないといけません。これは意外と難しいので、まずは他の方が話しているときにアンテナを張って聞き、「あ、今の表現は間違っているな」というように「気づく」トレーニングから始めてみてはいかがでしょうか。

経営者コンサルタント 高山 友紀子

高山 友紀子

プロフィール
私立明治学園小・中・高等学校、福岡女学院大学卒業。
大学卒業後10年以上にわたり、九州電力をはじめ福岡地場企業にて役員秘書、ITベンチャー企業で社長秘書兼総務部長として勤務。その経験を活かし、2020年に合同会社Office Fierte(オフィス フィエルテ)を設立。法人向けにオンライン秘書サービスや企業研修(新入社員研修、管理職研修、コミュニケーション研修、接遇研修など)、個人向けにパーソナルプロデュース(見た目、立ち居振る舞い、話し方のマンツーマンでのトータルプロデュース)を提供している。特に、就活生、婚活者、営業職、経営者、子供をお受験させる保護者など、福岡県内外からパーソナルプロデュースの依頼が絶えず、数ヵ月先まで予約が埋まっている。

福岡アナウンススクールアナウンサー受験講座終了。
NPO法人日本サービスマナー協会認定マナー講師。
NPO法人日本サービスマナー協会接客サービスマナー検定認定校。

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