滝悦子のエッセイ「洒洒落落(しゃしゃらくらく)」

好きなことを極めるのが脳への栄養になる。

熱戦に次ぐ熱戦で湧いた、リオ五輪。
世界的な一大イベントなのにもかかわらず、大会中から各週刊誌を賑わせていたのは、相も変わらぬ選手たちの取るに足りないウワサ話。
よくもまぁ、こんな下らないネタを探してくるもんだと、アキレながらもそこはそれ、ヤジ馬はつい目が行くのです。
五輪出場の栄誉を得た方々だから、そのサイドストーリーも華やかだろうと思いきや決してそんなに高級ではなく、そんな中で我々ウォッチャーからの注目度No.1は断然「嫁姑問題」でした。
身上相談の題材の中でも古典中の古典もんだい。
大昔からもう使い古されて飽きてしまい、もはや嫁姑は未来永劫にわたりウマくはいかないと諦観にも似た空気に支配されている昨今、出ました催涙弾。
なんといっても体操男子団体と個人総合で金メダルを取った男、内村航平が渦中の人だから得点高い。
しかもとびきり分り易いのだ。生まれてからずっと育ててきた母が試合会場でハチマキして派手な応援を繰り広げるのがイヤで距離を置く息子と、余裕綽々の美人妻。「妻の宣戦布告」などと煽る女性誌。
ところが驚きの援軍現わる。あの尾木ママの発言は強烈で、行き過ぎた教育ママだというそれまでの論調はひっくり返ってしまった。いわく、内村家は体操クラブを経営してると聞けば誰もが「英才教育をしたに違いない」と思うでしょ。でも違うのよ!親はサッカーや野球を勧めたのに、航平君が「好きな体操をやりたい」と。「子どもが楽しそうにやっていたことを応援しただけ」という姿勢がすばらしい!脳科学的に見ても「好きなことを極める」ことは脳にとって一番の栄養になるのよ。しかも「優勝して」という言葉を今まで一度も言ったことがないんですって!親の期待は子どもの重荷になる。「期待の『き』は嫌われるの『き』だ」と考えて期待しないようにしたとか。「生きていてくれれば、それでいい」そんな子育て論にすっかり感心しちゃった!と。
尾木ママはこんな新しい母親像が「日本にもっと広がってほしいわ」というが、しかし。こんな物分りのいい母でも、妻の作るカレーライスの待つ家に帰るのが男の性なんですよね。
コレ、私にしてはテイゾクな感想ですがね。