滝悦子のエッセイ「洒洒落落(しゃしゃらくらく)」

数学のもつ説得力

宝くじが大好きな友人がいる。
四季折々必ず並んでまで買い続けて半世紀近く。よく飽きないものだと思うが本人はいたって真面目で、空振りに懲りる様子もない。
最近、統計学者から聞いた話をぶつけてみた。
「宝くじや競馬、いわゆる公営ギャンブルというのは控除率が高いんですって」
「ナニ?控除率って」
「全賭け金に対する胴元、運営者の取り分。俗にいう“寺銭”のこと。宝くじの控除率は約55%だと」
「えぇ〜そんなにぃ〜〜」
「そうですよ。要は、全売り上げの約45%を当選者で分け合うシステム。だから賭ける側に不利なギャンブルだといえるわけ。」
急に黙り込んでしまった友人に構わず、競馬は25%、サッカーくじのtotoは50%だとも教えてあげた。
胴元に半分以上を取られる理不尽さを理解したら次に気になるのは当選率だが、2012年のオータムジャンボ宝くじの場合、当選金額3億3000万円の1等賞は1000万に1枚だったという。
ということは1000万分の1の確率・・・。
「わたしは夢を見て夢を買ってるんです。よけいな口出しはしないで」と不機嫌になってしまった友人。
ふだんは数字に弱い私でも、数字で説明されると妙に説得力があって驚いてしまう。数学者の芳沢光雄氏による1万1567回のじゃんけんを分析した結果というのにもビックリした。
グーが出る確率は35.0%、パーは33.0%、チョキは31.7%だという。
手の構造上、グーは出しやすく、緊張していると握り締める傾向がある。要するにパーが最も勝つ率が高いということになる。
そういえば私は、どうしても負けたくない時の、じゃんけんに勝った覚えがなく、そのわけは無意識に力が入り、いつもグーを出していたから。
これまた半世紀ぶりに分ったのでした。