滝悦子のエッセイ「洒洒落落(しゃしゃらくらく)」

脂肪について

ダイエットに挑戦して数十回失敗した友人、38歳独身男性がいる。
慢性の食べ過ぎであり、わかっちゃいるけど止められないという典型的なタイプで80キロの体重を抱えて20年経つ。
何をどう進言しても効果がなかった彼が最近すこし目覚めた気配がある。
それは『「平成22年都道府県別生命表」いわゆる長者番付が日本人の危機を物語っている』という研究結果を聞いてからだという。
長寿一位の長野県と沖縄県の食品群別摂取量などを詳細に比較検討した結果、食品摂取の「バランス」が如何に健康の鍵を握っているかが改めて分ったというもの。
長寿の最大の敵は「脂肪」だということが判明し、そこで浮かびあがってきたのが、健康を脅かす中性脂肪を原因とする『新・生活習慣病』。「肥満」、「脂肪肝」、そして「食後高脂血症」の三つ。日本人の成人男性の約三分の一が脂肪肝だとのデータもあるそうだ。
ダイエット失敗男が震撼したのは、このうち「食後高脂血症」についての説明だ。
これは食後に中性脂肪が上昇し、血液がドロドロになり血管が詰まりやすくなった状態を指す。
脂っこいものが好きな人、三食しっかり食べている人は、この状態になっている可能性が非常に高い。
ここから先の報告に失敗男は強烈に反応した。
食事で摂った中性脂肪のピークは約6時間後で、このとき血液が最もドロドロになる。ならば、朝7時の朝食ならピークは昼の2時、その頃には多くの人は昼食だ。次のピークを迎える夜の7時頃にはまた夕食を。その6時間後の深夜1時には眠っていてほとんど水分も摂らない……。
つまり多くの人は一日の大半を“食後”しかも、血液ドロドロの状態で過ごしていることになる。
おなかのなかに、スキマがないんです。
しかもコレステロールと違って、中性脂肪に対しては劇的に効く薬はまだまだ少ない。
結局、食事の際に脂質のとりすぎに気をつけ、低塩分、豆、野菜、いも類、魚食を多くして、適度な運動を心がけるしかないのだ。
「以前、アンタ毎日西瓜20個ぶら下げて歩いてるのと同じよって医者に言われた時よりショックだった」とラードたっぷりラーメンとトンカツ好きの失敗男はうなだれた。