「婚活中です!」と張り切っていた31歳エンジニア男が「また駄目でしたぁ」と報告に来た。
話を聞いているとどうも女性への評価基準に難があると思われる。たとえば、
「心に不安を抱えてるんですよ彼女は」
「なんで判るわけ?あのちょっとハデな服を着てた人でしょ?明るい感じしたけどねぇ」
「ハデな格好の女性ほどみんなに見てもらいたい、自信家だと思うでしょ?ちがうんですよ」
「なんで?」
「人間はね、自分の身体境界というものを無意識のうちに常に感知していて、それは着ている衣服もふくまれるんです。衣服は自分を守ってくれる第二の皮膚であり、またある種の鎧(よろい)でもありまして。だからこそ、傷つきやすくて不安な人ほど、自分の身体境界を強めようとして、最新流行のファッションで身を固めると――」
「自分の不安な内面を守るためだと?」
「ホラ、大きなアクセサリーをたくさんつけてる人がいるでしょ、ブランド物だらけとか。ぼくはああいう女性を見ると心に何か問題が、と考えてしまうんですよねぇ」
「アンタ、単にケチなだけじゃないの?モノを買ってプレゼントしたくない言いのがれよ」
このテの、少しばかり心理学用語を織り交ぜながら解説する男というのは、ホント、女から見るとウットォしい。結婚なんて冒険心とハズミなんだから、理屈ばかりじゃ前へは進みませんよ。
「もう一つ、上目づかいの視線なのが引っかかりました」
「何それ?いいじゃない、相手に対してへりくだってる、私は受け身ですよ、可愛いじゃない」
「上目づかいは他力本願で甘えん坊。自分の力で物事を決めたり新しいことを切り拓こうとする根性のない人です。かといって下を見下す視線は自分のほうがエライ、優位に立ってリードしたい人。左右にキョロキョロ動くのは不安の表れて落ち着きのない気分」
やれやれ、欠点探しのうまい男に幸せは訪れませんよ。