ふとしたハズミで歌のメロディが頭の中に住みついてしまって、一日中、いや3日も4日も同じ曲を口ずさんでいる自分―――。どうしてこの歌ばっかり口から出てくるんだろ、しかも無意識のうちに、歩いていても、手を洗っていても・・・フシギだなぁ・・という経験。ありませんか?誰でもいちどはあるあると賛同していただけるはずですが。
私の場合、この一週間は「胸の振子」という懐かしき昭和の歌謡曲なんです。
読売新聞に連載されていた「時代の証言者」でワイルドワンズの加瀬邦彦が「好きな歌は胸の振子」だと発言していて、ひぇ〜〜私と同じじゃないかと驚くやら喜ぶやら。
その日以来ずっと耳の奥で鳴り続けているわけで。
昭和を代表する大作曲家、服部良一とこれまた異才を誇るサトウハチローの作詞で
♪♪柳にツバメはあなたにわたし 胸の振子が鳴る鳴る朝から今日も 何も言わずに二人きりで 空を眺めりゃ何か燃えて〜♪♪
というような恋する男女の心情を霧島昇が淡々と唄って時代の気分あふるる佳作。
私はこの歌はリアルタイムでは知らず、10年程前に歌手菅原洋一から教わって即好きになったのだった。一度聴いたら忘れられません。
加瀬邦彦は今年70歳(!)で未だに現役で歌っている。沢田研二の一連のヒット曲はほとんど加瀬のプロデュースだが、やはり一大ブームを創り出した類のない感性の持ち主はひと味違う。なにしろ「胸の振子」だもんね、と私は鼻高々で、周りのカラオケ好きにいっぺん歌ってみてと勧めて回る自慢の日々なのである。
ちゃんとカラオケに入っているから二度びっくりした。
「歌謡曲は日本の文化遺産だ」というのは五木寛之だが、まったくそのとおりだと私も思う。
由紀さおりが米国のジャズオーケストラと共演し、往年の日本のヒット曲を集めた新作アルバムが各国のランキングで軒並み上位にランクインして話題を集めているが、さもありなんと考える。
世界中の音楽の美点を吸収し、日本流に消化して独自の表現をめざしたのが歌謡曲だからである。