「夢を叶えるには、けして諦めないことです」
鉄人とよばれた男はキッパリと語った。
野球評論家、衣笠祥雄との目黒でのトークライヴで、私に最も深い印象を残した言葉は「アキラメナイ」である。
「ダメかもしれないと思ったら、ダメになるんです」とも。
広島東洋カープの強打者として連続試合出場世界記録を達成し、国民栄誉賞を授与された男にしてこのシンプルなフレーズはサスガだと、同じステージ上に居ながら我を忘れてうっとりと聞き惚れたものである。
そして世の中には同質の考え方が他にもある。
「夢は伸ばした手の1ミリ先にあるんだよ」
AKB48のメンバーにプロデューサーの秋元康が送った一節だ。
草野球レベルに甲子園出場という目標を示し、そのためには魔法などはなく、ひたすらトレーニングを重ねて鍛え上げるしかなかった。
「たった1ミリ先にあっても、実際に触れられなければ、遠く先にあるように思えてしまいます。自分はチャンスを掴むことができないんだ、と不安になりますよね。でも、そこで挫(くじ)けて手を伸ばすことをやめてしまうと、永遠に夢を掴むことができないんです。今のメンバーは、見えない夢に手が届くことを信じて、懸命に伸ばし続けた、そんな子たちなんですよ」(産經新聞「彼らの心が折れない理由」より)
また秋元康の信条は「何か始めなければ、何も起こらない」で、誰かがやったことをなぞるつもりもないし、昔受けたネタを手を変えて繰り返すことにも興味がない。とにかく新しいことをやってみようと思っている、と。
今では日本を代表するアイドルグループとなったAKB48であるが、メンバーの中には、オーディション落選の経験を持つ者も多いと聞いている。失敗を恐れてはならないのだ。思いどおりいかないことを失敗と思う人は挫折する。悔しさをバネにして「今度こそ」と思ったときに成功が近づくのだ。