滝悦子のエッセイ「洒洒落落(しゃしゃらくらく)」

男のバッグについて

ビジネスシーンにおいて、颯爽とスーツを着こなした男たちが立ち働いている姿を見るのがたまらなく好きだ。
「あ〜っ、この男は充実したシゴトをしてきたんだなぁ」とは、私の場合2秒で分かる。
1秒でも3秒でもいいのだが、とにかく、瞬時に判断できる勉強と訓練をしてきた半世紀にわたる経緯がある。なにしろ男が好きだから。
その際に残念なことが最近続けて起きたので、関係者の方々には猛省を促したく。他でもないセカンド・バッグというシロモノで、これはイカン、最悪です。
私が男のファッションチェックをするときに長年にわたり参考としているのが「できる男の服装戦略」石津謙介著(チクマ秀版社刊)。
テレビでも御活躍の料理研究家、山際千津枝さんから頂戴した。
「男のオシャレに必要なことが全部書いてあるバイブルみたいな本よっ。50冊買って気になる男の人たちに配って歩いてるんだけど、アナタにもアゲル」
気前の良い友人とはホントに有難度い。
著者の故・石津謙介先生は言わずと知れたファッションリーダーでVANを創業、「TPOつまり時・場所・目的によって着分けるのが洋服着用民族の常識」と服装ルールを定めた貢献者でもある。
本のオビには「ビジネスチャンスをものにする。成功する男はここが違う」とある。
その中で指摘されていることは、
「見苦しいのは、醜くふくれあがったセカンド・バッグというやつ。世界中で、あんなものを持ってビジネスの場に出てシャアシャアとしているのは日本人だけである。とにかくビジネスの場には絶対に持ち込まないでいただきたい」。
あくまでも趣味の良い無地のブリーフ・ケースかアタッシェ(よくアタッシュと書かれているがアタッシェが正しい)・ケースで、レザー(フェイクも含む)かモールド素材。
間違っても、メーカーのロゴ入りや爬虫類の皮革などは選ばないこと、と続いている。
いずれにしろ、大の男が小型のバッグを膝の上にチョコンと載せている姿を見ると、なんかウサギのぬいぐるみを抱いた幼児を連想してしまうのだ。
少なくともA4サイズの紙が入る形にしていただきたい、それがバランス感覚だと思うのである。