滝悦子のエッセイ「洒洒落落(しゃしゃらくらく)」

ちがう風景をイメージする話

「なんといっても大切なのは『想像力』ですわ。人間の想像力というのは物凄いパワーを持っている。これは事実ですよ。」
ざっくりした織りの若草色した結城紬に身を包み、はんなりした身のこなしだが、しかし言葉遣いは一語一語がキッパリしている。
京都の祇園で長年お茶屋の女将をしているから、粋でありながら芯は強いのだ。
成功哲学を読破し、さまざまな自己啓発のセミナーにも出てみての彼女なりの結論だという。
「意識するだけで、そうなるってこと。というかそれに近づくってことなんだと思いますわ。あなたはあなたのなりたいようにイメージすると必ず近づくんですよ。」
たとえば、美しい海の見えるオフィスで精力的に仕事している自分。
森の中を風に吹かれながら愛する人と歩いている充ち足りた自分。
個人の銀行口座には10億円ある。
会社のプレゼンテーションで絶賛されているところ。
絶世の美女(美男)に囲まれているところ。
想像力は強烈なチカラを持っているのだから、必ずそれに近づく。ポジティブにイメージすれば、ポジティブに進む。
「成功している人は不思議とどなたも、ぼくも昔からなりたい自分をイメージしていた、とおっしゃるんですわ。何人も何人も見てきましたから間違いありません。現実の風景とはちがう、別の風景をみてはるんですね、きっと。」
「ちがう風景・・・ですかぁ。」
思わず私が訊き返すと、頬笑みながら女将は
「そうです。目の前で起きている現象ばかり『モノが売れない』とか『お客が来ない』『不況業種だから』『田舎だから』とボヤいている方々と全く同じ条件なのに、元気な方はそれでも元気。元気の共通点は想像力の逞しい人。今はそこにはないけど、きっとどこかに在ると信じた『ちがう風景』を見てはるんです。」
どうでしょうか?あなたも信じてイメージしてみませんか。