滝悦子のエッセイ「洒洒落落(しゃしゃらくらく)」

ロッカールームを見ればわかる

掃除には大層熱心な性分になってしまった、という経緯は前々回に書いた。
「トイレの神様」異聞。
よくしたもので、自分が関心のある事柄については、たとえば雑誌を読んでいても、テレビを見ていても、パッとそこだけ視野に入ってくるんです。
「断捨離」という絶妙な三文字熟語で人心を恐れさせておいて、次に出てきたのは「片づけコンサルタント」。職業は最初に言い始めた人勝ち、の見本のような。で、本の題は「人生がときめく片づけの魔法」とくる。
これで分かるのは片づけとダイエットは似ていて、王道はない、のである。
アタマでは理解していてもカラダがうまくついてきてくれず、挫折とリバウンドの繰り返しなのだ。だから月刊誌の特集に何回も組まれることになる。
わたしたち凡人は、少々散らかっていてもマァ、イイヤ・・・で済むかもしれないが済まないのは飲食業の方々だ。
これまで私はイヤというほど「片づけ下手で店をツブした人」を見てきたから断言できる。「掃除せん奴は絶対伸びん」と何軒もの名料理店主から聞いてもきた。調理以前に大切なのは清潔なのだ。
九州出身者でいえば一風堂店主の河原成美。
「繁盛店づくりの最大の秘訣は掃除の徹底にある」「バックヤードの整理整頓が理想的な舞台を作る」など全部で五十訓の「一風堂心得帖」を書いているほど重要視している。
私はこの30年間、フードライターとして或いはラジオの食番組のパーソナリティとして数百軒のお店を回ったが「例外はない」のである。
食と美観の相関関係については、そういうわけで一嘉言ある私なのだが最近、全く異業種でも通底する、と驚かされた。
日本シリーズに2度出場して2度ともMVPの今江敏晃(千葉ロッテマリーンズ)は、チーム内で一番ロッカーをきれいにしているから「美化委員」というシールが貼ってあるそうだ。
おそるべし、今江。
私は大いに喜んで、旧知の衣笠祥雄鉄人にも尋ねてみた。すると、
「ロッカールームを見ればだいたいその選手の性格、持ち味がわかります」と。
トリハダが立ちました。