50年程前に、今は亡き父から「エッチャン、引出しの中は、アンタの頭の中と同じやけんネッ。散らかっとったら頭の中もゴチャゴチャしとるということバイ」と教えられた。
頭の中はスッキリしておきたいとは子供でも解ったから、以来私は家の中の掃除には人一倍気を配るようになった。
その成果として先日、TVでお馴じみの料理研究家、山際千津枝さんが我が家に来て「タキさん、アナタを大っ嫌いな人でも、この部屋を見せたら急に好きになるよ」と、日頃の掃除の出来ばえをほめてくれたので、認められた私は機嫌良く、ますますあちらこちらを磨き込んでやろうと思っていた矢先。
「トイレの神様」の「紅白」初出場第一報が飛び込んできた。
下馬評でも当確だったから驚かなかったが、アレッ?と違和感を覚えたのは曲のバックに流れているプロモーションビデオの映像だ。
そもそもこの歌は、トイレには女神がいる、毎日きれいにすれば「女神様みたいにべっぴんさんになれるんやで」という祖母の教えが基本になっている。
トイレ掃除には不思議なチカラが宿っている。この考え方は衆知であり、大会社の経営者たちが我も我もとトイレ掃除を社員研修に適用しているのも有名な話である。
あの堺屋太一氏が今夏「トイレの神様」を聞いて感激し即、自身がプロデュースした上海万博日本館会場のステージに招いた逸話もいかにも象徴的ではないか。トイレ磨きは人の心をも磨く心の修行だという解釈はオジサン受けするのはもちろん、もはや日本人共通の認識。
であるにもかかわらず、PVではおばあちゃんは長い柄の付いたモップで掃除してるんですよ。私は反射的に「手でせなイカンやろ」と叫んでいたのでした。
正しいやり方は「手」でしょ?
などと無用な心配をしていたら、今度はこの物語が映画化されて、祖母役は岩下志麻が演じると言うニュースを聞いた。
はたして日本映画界随一の美貌は、どんな道具を用いて掃除をなさるのか。
楽しみである。